東海道本線焼津駅 18:13
思い返せば、僕の人生において祭りに参加したことがないのであった。
神輿を担いだこともなければ法被なぞ羽織って何かをしたこともない。
生まれ育ったのは長崎の郊外のニュータウンだし、社会人になってからも地元に根付いて生活したことがない。
尾道だってその気になれば地元の自治会に入ってベッチャー祭りの手伝いくらいできたかもしれないのだが、祭りのある週末は撮影の仕事が入る。
かくして町の空気を吸うだけで、溶け込むことがなかったように思う。
きっとこれからもそうだろう。
焼津の海辺の街の歴史は古い。
夏の大祭では神社から神輿が出て一日かけて街の中を練り歩く。
白装束の男衆が独特の掛け声でもって担いでいる。
その途中で年齢別の巫女さんが舞を奉納するのだが、その一人の少女の写真を撮る。
奉納する場所は小さな祠の前である。
そこへカメラ・スマホを手にした人が詰めかけるので立錐の余地もない。
仕事だから最前列にいたつもりがさらに前に割って入ってくる人もいて、わずかな撮影スペースを確保しながら舞が始まるのをじっと待つ。
なんといっても僕は余所者なのだ。
十二歳の彼女は巫女の衣装が板についている。
緊張の解けない表情で舞うが、観に来た弟たちと目が合うと口元に笑みが浮かぶ。
焼津で生まれ育った彼女にとってはこの祭りが人生の一部になっているのだろう。
つつがなく舞い納めて、大役から解放されるとようやく自然な笑みがこぼれた。
東海道本線岐阜駅 10:11 静岡県焼津市まで。
静岡県焼津市城之腰 17:24
巫女になって祭りの奉納舞を舞う十二歳女の子の写真。相当練習したのだろう、終始緊張した面持ちだったが崩れることなくきれいに舞い納め。依頼されたとはいえ、小さな祠の前で町の人たちが密集して観る中に余所者が入って撮るのは身体的にも肩身が狭い。
独特な掛け声に合わせて神輿が練り歩く。参加する人の多さに驚く。
東海道本線豊橋駅 20:30 岐阜に着くのは10時前。画像処理も終わったし、ホテルに戻ったらデータをアップロードしてから飲む。