東北本線秋葉原駅 21:35
秋葉原駅の昭和通り口は『ヨドバシ口』としたほうがわかりやすい。
ヨドバシカメラの存在感が大きすぎるのだが、反対側が『電気街口』だから巨大企業に対抗する中小連合みたいになってしまう。
やはりまずいだろうな。
山手線を降りる前にクライアントさんの会社の場所を地図で確認して、秋葉原駅で間違えないように昭和通りのほうに出る。
6時を過ぎてあたりはロゼワインのような色をしている。ビルの谷間は空よりもLED照明のほうが明るい。
駅のすぐ前で小柄な若い女性が路上ライブをしている。ギターの弾き語りで、歌い始めた彼女は柔らかいいい声だ。
都会だなあ。
尾道よりも世羅から東京に出てくるとなおさらそう感じる。
夕方になるとときおり国道を走る車の音とひぐらしの鳴き声しか聞こえない世羅の家では今どうしてるだろう。
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
室生犀星の有名な詩を思い出す。
世羅や尾道は本当の故郷ではないし、実際そこでも余所者なのだが、僕にとっては『ふるさと』のようなものである。
あちこちふらふらしているけれども、帰る場所があるから旅になり、そうれなければ流浪になる。
ひとり都のゆうぐれに
ふるさと思ひなみだぐむ
泣きはしないが、今夜の東京は蒸し暑い。空気がべたべたしてて閉口する。
まあでも今日の撮影場所はオフィスビルの中だから涼しいだろう。
とある会社の懇親会の撮影である。いい写真を撮ろう。