近畿日本鉄道橿原線尼ヶ辻駅 13:55
刷毛で白い絵の具を流したような雲が青空に描かれている。
穏やかな秋の日である。
六歳のお姉ちゃんは、赤ちゃんのときから撮っている。
平成の最後の年に弟くんが生まれ、新築当時、緑色の布ハンモックが吊ってあったリビングには、今や二人分のおもちゃが溢れている。
昨日と同じ今日はなく、変わりゆく家族の写真を撮れるのは本当に嬉しい。
お姉ちゃんは美容室で着付けたものの、弟くんの着物はママがYouTubeを見ながらがんばったらしい。袴は上手に着付けてある。
しかし甘えん坊の二歳児は走り回って羽織を着ない足袋を履かない。それをなんとか身につけさせて家を出る。すでに大人のHPは大きく削られている。
お姉ちゃんはそれが自分の役割なのだとわかっているのだろう。冷静に騒ぐ弟の相手をしてくれる。今日一番助けられた。パパかママがこれを読んでくれてたらほめてあげてほしい。
記念写真を撮るときもじっとしてない弟くんの動きをなんとか止めて撮って、そのあともてんやわんやがあって、なんとか家に帰り着いて七五三が終わった。
家の玄関先で当日データをSDカードに移していたら、ジャケットを脱いだパパがやれやれといった表情で呟いた。「疲れました……」
それも今日の写真とともに思い出になってくれるだろうか。
子育てはまだまだ先が長いけれども、おじいちゃんおばあちゃんまで揃って祝うハレの日は、この先そんなにないから。
大阪市西成区太子 9:14 魚肉ソーセージを片手に持ったおじさんが、缶酎ハイを立ち飲みしている西成の朝。
空が高い。