三原由宇出張写真室

2018年9月30日日曜日

さいたま市大宮区宮町 14:54



 

 
 
撮影終えて氷川神社の長い参道を歩いていると、ぽつりと雨が降り出したかと思うと、少しずつ雨脚が強くなってくる。撮影中どこかに傘を置き忘れてきたと気づく。
 
もともとよく忘れ物をするのだが、今日一度も開くことがなかった傘を置き忘れて来たとたんに雨が降り出すのであるから、自分の間抜けさ加減を嘆くほかない。 
 
あいにく駅近くまで15分歩かなければコンビニもない。諦めて濡れながら歩く。このあとはホテルに帰るだけだから、まあいいか。台風が来る前に撮影できてよかった。
 
駅に着くと大きな液晶モニタが改札前に置かれていて、夜8時以降は電車の運転を取り止めるから早く帰るように、というような文章が表示されていた。さながら戒厳令のようだと思う。
 
 
七五三のシーズンを迎えて、神社には着物姿の子どもをちらほら見かけた。
  
三歳の女の子は始めは緊張した表情だったが、人見知りしない子だったので、すぐに打ち解けた。
 
彼女はよくしゃべる。三歳といえども弁が立つ。僕がふざけると真面目な顔で注意してくれる。彼女と口喧嘩したら負かされそうな気がする。男と女では根本的に頭の中の構造が違っているのだろう。
 







東京都板橋区成増 11:32


 

 
 

 
朝10時からの七五三撮影は台風から波状にやってくる雨雲の合間になったようで、雨には降られず。
七歳と五歳の兄弟は男子らしいノリの良さで、すぐに僕の遊びに付き合ってくれる。
  
撮影では基本的に僕が子どもと遊ぶ。
遊んでいる間、パパとママが手持ち無沙汰になってしまってぼーっとしているのはなんとかしたいと思うけれど、子どもの笑顔を撮るにはこれが一番確実だ。
   
逆に子どもと遊んでくださいと言うと、たいていの親は戸惑うか、不自然に高いテンションで子どもと遊ぼうとする。
撮影に慣れていないとなかなか自然体でふざけられないものである。
 
僕にとってなかなか撮れない場面は、子どもが親と一緒に楽しそうにしているところかもしれない。
 
撮影終えて神社から成増駅に向かう長い坂道を歩いていたら、自転車に乗った父親と男の子がすれ違った。どこへ行くのか楽しそうに笑いながら。心の中でシャッターを切る僕はその瞬間の表情を撮りたい。
 
 








2018年9月29日土曜日

関西国際空港 19:28

  
 
 
  
台風24号が紀伊半島を目指して刻一刻と近づいて来ているが、羽田行きは予定通り飛ぶらしい。
 
和歌山から大阪行きの快速に、南アジア系の男性が大きなスーツケースを2個提げて乗ってきた。
その大荷物をどこに置こうかと迷っている風情だったので、僕がいた向かい合わせの座席の後ろに置いたらどうかと提案する。
 
電車は定刻に発車したものの、山中渓駅付近で対向列車がイノシシと衝突したとかで、その手前で一時運転見合わせとなった。一向に動き出さないので、僕と向かい合わせに座った彼は不安げにスマホと暗い窓の外に目を走らせる。
 
車掌のアナウンスをそのまま口頭で説明できる英語力は僕にはないので、画像処理していたMacで英文を書いて彼に見せると、ようやく納得した表情を見せる。
  
結局、電車は30分遅れで動き出した。日根野で関空行きの電車に乗り換え。空港が見えると彼は台風が来る前に帰れてラッキーだという。インドから出張で日本に来たらしい。フライトは夜11時だそうなので十分間に合う。
  
訛りの強い英語を話す彼とホームで握手して別れた。いつかインドにも行ってみたいなあ。
 
 




和歌山県田辺市湊 15:40



  
 
 

  
ときおり白いすだれのような雨が玉砂利を叩く。
台風24号から吐き出される雨雲が次々と紀伊半島にやってきている。
風がないのが幸いで、雨雲の合間を縫って神社の境内で新郎新婦の写真を撮る。
 
闘鶏神社の神主さんはサービス精神旺盛な方で、挙式の誓詞奉読のときはもっと前に来て撮れと指示し、指輪交換のときは新郎新婦の動きを止めてカメラを見るように促したりと、撮っているこちらが戸惑うほどであった。
  
     
挙式の前、親族控室で写真を撮りつつ部屋の中の会話に紛れ込む。
新婦の祖父母は伊予の人で、愛媛県西条から来たという。60年前の二人の新婚旅行先は奇しくも孫が挙式をする田辺市の近く白浜だったそうで、これも何かの縁であろう。
 
新幹線すらない昭和30年代前半、四国から南紀まではかなり時間がかかったろう。
まず四国を出るには高松から宇高連絡船に乗らねばならない。そのことを言うと、お祖父さんは嬉しそうに「汽車が高松に着いたら、ぱーってこの 人(お祖母さん)が走り出してね、びっくりした」と当時の思い出を話し出す。
 
当時、連絡船との乗り換えは競争だった。お転婆だったんですね、と合いの手を入れると、おしとやかに見える彼の妻は笑って「つむじが二つあるから」と言った。
 
動画撮影も依頼されていたので、雨を待つ間、新郎新婦にインタビューを試みる。
 
新郎はもともとインドアな性格で、新婦と出会って初めて海外旅行をしたという。彼は自分の視野を広げてくれたと彼女に感謝の弁を述べる。彼女はアウトドア好きで活発な人であるらしい。
   
今日は大人しそうに見える新婦も、もしかするとお祖母さん譲りのやんちゃな性格なのかもしれない。そう思って祖父母との記念写真を撮るときに彼女に聞いてみる。
 
「え?ひとつですよ」なぜそんなこと聞くのかと彼女は不思議そうな顔で答えた。
結婚おめでとう。末長くお幸せに。

 












2018年9月28日金曜日

本日の宿

  
 


ビジネスホテルホワイト(和歌山県田辺市)
 
 
2階のフロントに上がると誰もいない。
 
フロントの奥は、ごちゃごちゃと生活用品が積み上がった居間兼食堂といった感じの部屋である。白々と蛍光灯に照らされて ひっそりとしている。
 
とりあえずチェックインしなければならない。すみません、と声を上げると、誰もいないと思ったソファの上の毛布が持ち上がり、おばあさんがむくりと起きる。そして寝癖のついた髪のままよたよたと近づいてきて、錆び付いた声で「いらっしゃい」。ささやかにホラーである。
 
部屋に入ると、机の上にサービスのおにぎりとゆで卵が置かれていた。
 





南海電鉄南海本線なんば〜和歌山市