撮影終えて、西荻窪駅に向かう途中

撮影終えて、西荻窪駅に向かう途中、猫が車に轢かれるところを見た。
 
車道の端から飛び出した猫が、あ、と思ったら猫が車の下敷きになり、車はそのまま去って行った。運転手はまったく気づいていないようだった。
猫は、二、三度脚を痙攣させていたが、すぐに動かなくなった。
近寄ってみると、口から血を流していたが、頭はそれほど損傷がなかったのが幸いであった。赤い首輪をしていたから飼い猫だとわかった、
ちょうど、近所の女子高生達が下校している道で、何人かの女の子もその瞬間を見ていたようだ。
彼女らが遠巻きに通り過ぎていたから、せめて端に寄せようとカメラバッグを降ろして道の真ん中に横たわる猫を抱えると、通りかかった男性が、すぐ横の店の猫だよと教えてくれた。
薄暗い小さな店の中に声をかけると、白髪のおばあさんが出てきて、飼い猫の死骸を受け取った。
取り乱すかと思ったら、「(事故にあったのは)さっきですかね」と、淡々と尋ねてきた。
そんなだから、僕はお悔やみの言葉もかけず、ただ頭を下げてその店を出た。
道の真ん中にわずかな血だまりと尿が残るほかは、景色は何も変わっていなかった。
  
明日は、僕がこの猫と同じように死ぬかもしれぬ、と思う。先のことはわからない。死んでも景色は変わらない。
 
今頃、あのおばあさんはどうしているのだろうか。