尾道 17:08

  
 
 

駅へ切符を買いに行く。
単純な尾道〜東京の往復ではないので「みどりの券売機」では買えない。
  
ふつうの人ならぱっと見ただけでは頭の中に描くことのできない経路を書いた紙をつくって、駅の窓口氏に差し出した。
  
休日は彼女とテニスでもしていそうな彼はしばしそれを眺めて、手近の時刻表を引き寄せ、路線図のページを開くと指で僕が指示する経路をたどりながら端末を操作する。
 
こんな切符を作るのは月に一回もないだろう。
 
切符の発行端末で乗車券を作るには、路線の起点駅終点駅の入力が求められる。たとえば在来線で東京から博多までの切符を作るとなれば、東海道本線の終点神戸駅と山陽本線の終点門司駅の入力が必要になる。
 
僕もできるだけ正確に書いたつもりだったのだが間違っていたらしい。入力に苦労しながらようやく一枚の切符を出した窓口氏は声に出して僕に経路を確認する。
 
彼は犀潟を「くずかた」と言ったが、それは「さいがた」だ。屑という漢字が似てるけど。ちなみに秋田県には象潟(きさかた)駅があります。
 
窓口氏のいる事務スペースには英単語帳を大きくしたような紙の束が提げてあって、その一番上の紙には「When will you leave here?」という英文がプリントされている。
 
僕は明日ここを発ちます。