鞆鉄道新川線六本堂 11:30
春眠暁を覚えずというけれど、昨日にようやく名前が決まった赤ちゃんはぐっすり寝ていて、ゆすっても声をかけても、少し身じろぎするだけでまったく起きる気配がない。
生まれて10日目だから、ずっと寝ていて当たり前だ。
寝ている新生児は、まだ人間になりきれていない生命体のように思える。声を上げて泣き始めると、とたんに人間味が現れる。
ニューボーンフォトには寝ていてくれたほうが撮りやすいのだが、むにゃむにゃ顔を動かして表情らしきものを見せてくれるほうが僕は嬉しい。
結局、1時間ちょっとパパとママががんばってみたが、赤ちゃんは起きることなく、ずっと夢の中を漂っていた。
「しようがないですね」と大人同士で笑い合って撮影終了。
帰りは車で送ってくださるというのを、毎度のごとくお断りしてバス停まで歩く。
福山市と尾道市の間の、丸く海に張り出した小さな半島の真ん中あたり。
なだらかな山に囲まれた集落には、いくばくかの田んぼが広がって、トラクターに乗ったおじいさんが土を起こしている。
小さな小学校の校庭では、体育の授業なのか体操服姿の十数人ほどの子どもたちがボール使って運動している。
のどかな春の陽射しがそれらを照らしている。15分ほど歩くだけで、軽く汗ばむような陽気である。
今年は一気に春がやってきた。
とある民家の庭先に、黄色の小さな花をいっぱいにつけた木が植えられている。歩いていなければ気付かずに通り過ぎていただろう。
なんの木だかまったくわからないから、家に帰ったら写真を見て調べてみよう。