内房線木更津駅 13:39
冬の関東はよく晴れる。
東京から走ってきた君津行きの電車は、蘇我を出ると乗客は車内に数えるほどしか残っていない。
柔らかい陽射しを浴びつつ空いた電車に揺られる。
七五三のお参りに来た姉妹はすぐに懐いて一緒に遊んでくれる。
写真を撮るのではなくて遊ぶ。子どもはそのほうがずっと楽しくなる。
ひとしきり遊んだところでさようなら。
今日が初めましての家族は、七五三の次に写真を撮るのはいつになるだろう。
まだまだ子どもでいる時間は長いけれども、元気に、すくすくと育ってほしい。どの子にもそう思う。
東京に戻るまで、木更津の駅前をひとめぐりしてみる。
街はずいぶんと寂れて、アーケードの屋根を支える鉄骨が赤茶色に錆びているのが痛々しい。
木更津はアクアラインもあるし、みんな車で買物に出かけるから駅前に用はないのだろう。大きな商業ビルもテナントがごっそり抜けて「生ける廃墟」になっている。
裏通りの一角に、煤けたメニューサンプルを並べた店があり、一見して仕舞屋かと思ったが暖簾が掛かっているので入ってみる。
地元のサラリーマンが二組、おじいさんが一人、遅い昼食を食べている。
すりガラス越しの冬の光がやわらかく誰もいないテーブルを照らしている。
古ぼけた大衆食堂でつつましくラーメンをているとなんだかとても落ち着いた静かな気分になれるから、安くできた人生である。