南武線谷保駅 15:41
冬の青空からまっすぐな陽射しが降ってきて、境内に残る雑木林に木漏れ日が揺れる。
昔、といっても亡くなったのは30年前くらいだが、神社の近くに住んでいた山口瞳がよく散歩しにきていたそうである。文学碑があるらしいが今日は見つけられなかった。
七五三のお参りにきた五歳の男の子は、みんなに可愛がられてたぶん甘えん坊さんなのだろう。
歳の離れたお兄ちゃんがいろいろ面倒見てくれる。
神社に着いたときはパパに手伝ってもらいながら草履を履くのもおぼつかなかったのに、遊びだせば小走りにカメラを追いかけてくる。
たいていみんな「やればできる子」なのである。
ママのおじいちゃんおばあちゃんにおじさんおばさんまで来て賑やかなお参りになった。
祈祷で拝殿に上がれるのは家族のみということで、おじいちゃんたちは外で待たされる。風のない日でよかった。
お互いに久しぶりに会ったようで、おしゃべりに花が咲く。
伺ってみるとおじいちゃん二人は十歳違いの兄弟とのこと。兄は昭和7年生まれの90歳。
会話の大半は親戚の近況やすでに鬼籍に入った兄弟姉妹のことでよくわからなったが、動画に撮りつつ聞いているのは楽しいものである。
昭和世代の端くれとしては、戦前戦中生まれの人の話は残しておかねばならない。
かの山口瞳が生きていたら96歳。
高度成長期で男はモーレツに働き女は家庭を守るという、今は何かと否定されがちな昭和の精神も、当時はそれは当たり前だった。
いずれは平成、令和の精神もそうなる。いつの時代も社会の正解なんてどこにもない。