東京都台東区花川戸 16:52

 
 
 
 
年賀状の宛名書きに使っていたゲルインクのボールペンがいきなり書けなくなったのが、外に出るいい頃合いだったのかもしれない。
 
雨上がりの東京は、ちょうど日が暮れる頃であった。
 
文具店の場所を検索してからホテルを出る。
 


東武浅草駅はシックな洋風ビルで、その昔は全部が百貨店だったが、今は縮小されて上層階がテナントモールになっている。
 
4階にはくまざわ書店があり、文具売場が併設されている。
 
訪ねてみると、レジの脇にある万年筆のショーケースの前で、問屋さんなのか営業の男性と、年配の女性店員が発注だか在庫だかについて慣れた会話をしているところだった。
 
懐かしいな。
 
その光景に懐かしさを覚えるのは、かつて百貨店店員時代に文具売場担当だったせいである。

新卒で入社してから8年間売場に立って販売と仕入れをしていた。
 
入社当時はまだスマホが存在せずパソコンも普及してない時代で、「システム手帳」と呼ばれるバインダー式の手帳が年末になるとよく売れていた。
 
そのほかの売れ筋といえば、レターセットやポストカード。 

まだEメールというものさえなかったときは、手書きでメッセージを送りあっていたのだ。おしゃれでしょう。 



文具売場には、筆記具のほかにレターセットの棚もあった。
 
当時扱っていたメーカーさんの商品がきちんと並んでいるのを見ると、このスマホ全盛の時代によくがんばっているなあと、古い戦友に出会ったときのような気持ちになる。
 
話が逸れた。欲しいのは三菱鉛筆のゲルインクボールペン「シグノ」である。それはすぐに見つかってよかったのだが、レジの前の棚に置かれたプラチナ万年筆の「プレピー」が気になった。300円の万年筆である。
 
ゲルインクは滑らかで書きやすいが、良くも悪くも均一的でインクの濃淡や線の強弱といった味わいがない。
 
家に帰ればモンブランの万年筆があってたまに使うが、300円の万年筆とはこれ如何に。
 
 

懐が痛まないのをいいことに、ペン先が0.5(M)のものを買ってみた。
 
ホテルに戻って、ペン軸にインクカートリッジを挿す。
 
インクがペン先まで出てくるのに5分くらいかかったが、書き味は滑らかで、ちゃんと「万年筆で書いた文字」になっている。300円の万年筆で書いたとは思えぬ。
 
IT関連では他国の後塵を拝するようになってしまったが、こういう細かいモノ作りは日本ならではだろうなあ。明日はこれでまた年賀状の宛名書きをするんだ。
 
 



東京都墨田区吾妻橋 16:41 年賀状の宛名書きしてたら、インクが出なくなったので、大川を渡って浅草まで買いにゆく。民家の脇にクリスマスのイルミネーション。

夕暮れの大川。都会は視界に入るものすべてが人工物。




松屋浅草店の階段の手すりは緩やかにラウンドしている。この飾りみたいな黒いオブジェは何のために置かれたのだろう。


ゲルインクボールペンだけ買うつもりが、プラチナ万年筆の300円万年筆「プレピー」も買ってしまった。ペン先0.5はMとのことだがFに近い。意外なほど滑らかに書けてちょっと感動。0.2も買ったがこれは細すぎて使えない。今日は冬至なのでいただきもののかぼちゃスープを温める。ありがとうございます。