広島県福山市三之丸町 12:28
SNSで知った知らない誰かにメッセージを送るのはちょっとした勇気がいるものだけど、それで相手にどう思われようがたいして気にならなくなったのは歳を取ってよかったことのひとつかもしれない。
メンズポートレート撮りたい、という書き込みの主に、撮ってくださいとメッセージを送ってみた。
相手はまるさんという女性である。
コントラストの強い、硬めの写真を撮る方である。カッコイイ写真だ。
スルーされるかと思ったら、すぐに返事が来たのでかえって驚く。
どうもモデルを募集しているわけではなさそうだったが、なんとか撮っていただけることになった。よかった。
自分の写真が欲しいというよりも、撮られてみたかったのだ。
サラリーマンを辞めた30代の頃、3年ほど芸能事務所に登録してでモデルや役者の真似事のような仕事をしていた時期がある。
自分が写っている写真や映像にはそれほど興味がなかった。
そこで本職の人の動きや振る舞いを見たりやったりしてなんとなく覚えた。
モデルはそのビジュアルよりもカメラの前でどう動くか振る舞うかということのほうが仕事としては大切であって、経験と勘が必要になる。
それを撮られているうちに思い出す。
まるさんは光と影にこだわった写真を撮るようだ。
立ち位置や顔の向きの細かい指示があるので、僕自身も顔に陽射しや影がかかる位置を探しながらポーズを取ったりする。
撮影ってそういう共同作業だったりするんです。
まるさんは「カッコイイ」を連発しながら撮影する。
なんだか面映い。そう言われて嬉しい年齢はだいぶ遠くなってしまったなあと撮られながら思う。
2時間ほどで無事に撮影は終わった。
自分が撮らなくても満足感が得られるというのは、ちょっと不思議なことだった。
彼女がイメージするような、ダークでクールなモデルだったかどうか心許ないけれど、いい経験をさせていただいた。
まるさんありがとうございました。