尾道 13:51
うちの近所のある土堂小学校は今春での閉校が決まっている。
すでに生徒は別の場所に建てられた仮校舎に通っており、古い趣のある校舎から子どもたちの声は響いてこない。眠ったかのように静かである。
尾道に引っ越してきた頃、路地で小学生とすれ違うとどの子も「こんにちはー!」と挨拶してきて、ああいい学校だなあと感動したのを覚えている。
朝は7時55分きっかりに高学年の子どもたちが体育館で練習する太鼓の音が家まで届く。
それ当たり前だった日々はもうない。
惜しいことをしたものだよ、と坂道の途中から小学校の校舎とグラウンドを見下ろして思う。
たまさか訪れる観光客にとってはなんの関係もないことかもしれないが、街の魅力というのはそこにいる人がかもしだす何かである。
たんなる観光地がつまらないのはテーマパークのアトラクションのようになってしまったからである。
自然に溢れた川のせせらぎをコンクリートで固めて土手に芝生を敷きつめてしまうようなものだ。
それがいいと思う人もいるだろうし、いずれ尾道もそうなるんだろう。
冷たい風が吹く冬の尾道はからりと晴れて美しい。
正月休みは終わり、駅前は観光客の姿も見えず閑散としている。
すれ違う人もいない細い路地は歩きながら考え事をするのにちょうどいい。汗もかかない。
尾道を旅するなら今である。