世羅 18:10
きゅうちゃん(猫)が8月13日に死んだ。
その日は僕は静岡県焼津市にいた。
ミチコさんからLINEで知らされて、雨の降りそうな曇り空を見上げたのだが、天国というのは空の上にあるものらしい。誰も見たことがないのに。
その前、家を出るときにほとんど寝ていたきゅうちゃんが起きて、これが最後かもしれないなあと思いながら話しかけたのである。
病気でもなく老衰だろう。
元は野良猫だから正確な年齢はわからないが、きゅうちゃんは推定17歳から19歳くらいなので、人間に換算すると84〜92歳というところで、まあ大往生といっていいのではないか。
だんだん弱っていくきゅうちゃんを見ながら、いつかはその日が来るのだという心づもりはしていても、死んでしまうともう亡骸だけで、餌を食べたりよたよた歩くこともない。
ミチコさんはきゅうちゃんがいなくてさみしいと言う。
死んで悲しいと思うよりは寂しいほうがいいのかもしれない。
なんとなくそう思う。
死んで5日経つというのに、家の台所の片隅にはそれまできゅうちゃんが寝ていたクッションがそのまま置かれていて、まだ匂いが残っている。
でもそれもいつかは片付けられて、きゅうちゃんがいた痕跡も消えてゆくことだろう。
たぶん自分もいつかはそうなる。きゅうちゃんと同じだ。
ちなみに「きゅう」は「球」で、背中に黒い肉球柄があるのでその名前になった。
他猫が近寄るのを嫌がり、いつも一匹離れたところにいてマイペースを貫いていた。
人が食べるものが好きで、よく魚や肉をねだって一緒に食べていた。
きゅうちゃん、またね。