富士急月江寺駅に向かって歩くうちに










 
  
富士急月江寺駅に向かって歩くうちに、旧歓楽街と思しき町の一角に入り込んだ。
歩みが止まってカメラを取り出す。
かつては飲食店が軒を連ねた通りは、今は見る影もなく寂れ果てている。横丁の路地にも小さなバーや居酒屋の跡が残り、おそらく昭和40年代くらいまではそれなりに栄えていたのだろう。
  
錆の浮いたトタンや、壊れたタイルの壁を見るとぞくぞくする。我ながらヘンな趣味だと思うが、同好の人はほかにも存在するらしい。朽ちたような建物に言い知れぬ愛着が湧くのである。
そうかと思えば「角田醫院」という表札を掲げた二階建ての建物が立派すぎてすごい。意匠を凝らした飾りなどがちゃんと外から見えるようになっている。
  
おしゃれな若い女性が興味を持ちそうなものは何もないけれど、この廃墟になりかけている街並みをなんとかできないものかと思う。富士山を間近に眺めながら散策できる商店街なぞ、なかなかあるものではないのだから。