尾道 16:47

 
 

  
島根県沖の日本海で生まれた雷雲が、中国山地を越えて尾道にやってきたのは午後2時頃。
 
激しい雨とともに雷の轟音が鳴り響く。
 
画像処理していたPCの電源ケーブルを抜いて仕事を続けたが、ああそうだと思い出して、ベランダに干しっぱなしだった洗濯物を入れて、家の窓を閉めてまわる。
 
 
 
雨垂れの音の中から、細い糸のような猫の鳴き声が切れ切れに聞こえた。
 
これは子猫の声だなあ、とぼんやり思う。
  
 
 
聞こえてしまったからにはしかたがない。
 
うちの周りにいる野良猫に子猫はいないから、どこかから迷い込んできたのであろう。
 
ちょうど雨が小降りになったときであった。 
 
声を頼りに公園横の階段を上がっていくと、雨に打たれてずぶ濡れのネズミがひっくり返っていると思ったそれが、か細い鳴き声の主であった。
 
見てしまったからにはしかたがない。
 
急いでミチコさんの店に持ってゆくと、案の定さっと顔色が変わって、そのみすぼらしい子猫をタオルで包む。
 
あとは動物病院に連れて行き、かたときも子猫のそばを離れない。
 
まあ、そうなる。
 
さいわいに子猫は病院でドライヤーで体を温めてもらって息を吹き返した。
 
 
 
夕方、雨は上がって青空が見えてきた。
 
子猫はこのまま家の猫になるんだろう。ミチコさんは帰りの車の中で名前を「にこ」にするという。「ニコニコのにこじゃ」
  
これで我が家の猫は9匹目。
 
飼ってしまったからにはしかたがない。
 
猫のエサ代を稼がねばならぬ。撮影のご依頼お待ちしています。