駅まで歩いて戻るには、団地の中を通り抜けると近道だ。

 
 
 
駅まで歩いて戻るには、団地の中を通り抜けると近道だ。 

ネットの地図で道だけ見て、何も知らずに足を踏み入れた。
 
これはかわった団地だなと立ち止まる。看板には「県営住宅一宮団地」とある。
 
直角三角形と四角形の箱をくっつけたようなコンクリートの住居がノコギリの歯のように並んでいて、古いSF映画に出てくる建物みたいだ。
 
その前衛的な建築物は丹下健三の作というのは、あとで検索して知った。さもありなんという感じだ。
 
できてから40年近くが経過している。空き家になっている部屋が散見される。
 
住居の前に何台もの車がパンクしたまま止められていて、なんだかミステリアスである。
 
団地の敷地内にはY字型のスターハウスが何棟かあるが、これらにはすでに住民がいない。
 
蝉の鳴き声だけが響く真夏の昼下がり。
 
そこに人は住んでいるのかどうなのか。
 
異次元空間に迷い込んだような気持ちになった。