北海道美瑛町北瑛 12:27
名古屋から来たカップルの前撮り。
好天に恵まれ、美瑛の丘からは大雪山がよく見えた。
最初の撮影場所は「セブンスターの木」。美瑛には名前がついている木や丘がいくつもあって、いわゆる観光スポットになっている。木の前では記念写真を撮る人が多くて、たまに順番待ち状態になってしまう。
駐車場には地元のボランティアなのか、「観光パトロール」とステッカーの貼られた車が停まっていた。周辺の農地に立ち入らないように見張っているのだろう。問題が周知されたせいか、立ち入り禁止の看板がいたるところにあるせいか、畑に入ってカメラを構えている人は見かけなかった。
次々に車で来ては木の前で写真を撮ってまたどこかへ移動してゆく人たちを見ていると、観光という「モノ」を消費しているような気がしないでもない。
駐車場で待合せて挨拶して、さっそくはじめようとすると彼から「どんなふうに撮影するんですか」と尋ねられる。初めての質問ではないが、明確に答えることができない。だからいつもテキトーに撮りますと答える。
「適当」は便利な言葉だ。
1時間の撮影ではできるだけ多くのバリエーションのカットを撮れるように立ち回って二人に合う写真を撮る。笑顔を作ったり、きっちりポーズを決めたりすることもしないから、二人にはいっそのこといいかげんな気持ちでいてもらいたい。
そういう気持ちの「テキトー」なのである。
はたして彼は「テキトー、ですか…」と拍子抜けしたようなあいまいな顔で繰り返した。それでいい。緊張とか気負いとかはいらないから。