北陸本線加賀温泉駅 14:24

  

 

  
真夏の陽射しが照りつける町の中を歩く12歳の男の子は頼りなさげな表情を浮かべている。

「青旅」に来た彼は中学1年生。いろいろ話しかけてみる。
 
好きなテレビ番組って何?「えー、テレビですか?なんかなあ…」

大人になったら、どんな仕事がしたい?「まだ考えてません…」

休みの日って何してるの?「うーん…ゲームかな…?」
 
どれもこれも煮え切らない答えが返ってくる。
 
なんか、こういう感じの男子をどこかで見たような気がするぞ。そうだ「エヴァンゲリオン」の碇シンジだ。
 
残念ながら「青旅」には綾波もミサトさんも出てこないから、中学生男子のテンションはアスファルトに溶けて張り付いているようだ。
  
それでも彼はバスケ部である。試合ではきっと今日とは別人のようにプレーするんだろうなあ。ちなみに彼がハマってるゲームはフォートナイトだそうだ。その名前は聞いたことがある。
 

 
北陸線の大聖寺駅からバスで日本海に面した橋立地区まで。
 
北前船の資料館もあるこじんまりした町だが、暑さの中で歩いている人は誰もいない。
 
集落の西のはずれに木を切り開いただけの駐車場があり、そこが展望台になっている。眼前が開けて真っ青な日本海を目にした彼は「おー」と小さく声を上げる。
  
そこから細い道で崖を降りると小さな砂浜である。
  
「シーグラス!」彼はかがみこんで一生懸命にガラスの破片を探し始める。シーグラスの何が彼をそんなに魅了するのかわからないが、彼は小さなガラスの粒をいくつも拾う。集めているらしい。
  
男子はいつまでも子どものようであるけれど、気がつけばちゃんと大人になっている。
 
色とりどりのガラスを夢中になって集めた日のことなど、いつか忘れてしまうのかもしれない。
 
それが12歳の彼のとある夏の日のできごと。
 

 
 










 

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