撮影終わって高砂の町を少し歩いた

 
 
撮影終わって高砂の町を少し歩いた。
 
旧国鉄高砂駅の前にはアーケードのついた商店街がある。もっともそこで開いている店は片手の指に収まるほどである。
 
屋根の下には時計もあったが、故障と印字された紙が貼られたままになっている。直したり取り替えたりする意思がまったくなさそうな古い貼り紙。
 
文字通り時の止まった商店街に佇んで、その昔、買い物客が行き交っていたであろう時代を想像する。
 
想像したからといって何もトクすることはないのだけれど、やっぱり想像するのって大事だろうし必要だろう。
 

 
想像しなくてもすごかったのが、現役銭湯の「梅ヶ枝湯」さんであった。
 
道を歩いていると、焚き火のような煙が漂っていて、なんだこれはと視線を巡らせて目に止まった建物の存在感と言ったら!
 
モルタルの建物には古びたレンガの壁がくっついていて、さらに古びた板壁が続く。小屋のように見えるところには薪が積まれており、奥でパンツ一丁のおじさんが動き回っている。
 
薪でお風呂を沸かしているのはすぐに知れる。じっと見てたら振り返った彼と目があった。薪で沸かしてるんですか、と声をかける。彼は見知らぬ僕に少し戸惑ったように「ええそうです」と答える。すごいですね!と声が出た。
 
ほんまにすごい。ここだけ昭和か。こんな銭湯を他所で見たことがない。
 
兵庫県は今すぐにこの銭湯を重要文化財に指定すべきである。いや国宝でもいい。