東海道本線小田原駅 17:40


 
 

   
山あいの集落の、小さな田んぼの前を通りかかると、11歳の少女は「豊作だ!」と小さく声を上げ、それから「品種はなにかなあ」とつぶやく。
 
米の品種が気になる小学生は珍しい。
 
ちょうど田んぼの持ち主らしきおじさんがあぜ道で仕事していたので、声をかけて聞いてみると「ヒノヒカリ」ということであった。
 
季節は秋の入口。もうすぐ山の稜線に沈む太陽を覆うように夕立の雲が広がって、地響きのような雷鳴が聞こえてくる。
 
  

「青旅」に来た彼女にどんな大人になりたいかと聞くと、すらりと「心の広い人」と答える。「なんかイヤなことがあっても、許せる人になりたい」
 
11歳でこの答えが返ってくるとは!
 
ミチコさんに「あんたは器が小さい」と言われ続けてきた男は打ちのめされた。僕は彼女の前でひれ伏したい。こんな大人でごめんなさい。
 
 
 
小田原といえば小田急だが、伊豆箱根鉄道大雄山線という短い路線があり、住宅地の中を走って20分ほどで終点に着く。そこからバスに乗ってで5分もしないうちに、山村の風景が広がる。
  
山腹に鎮座する足柄神社の足元にある集落には、清冽な湧水がある。彼女はためらわずに手ですくって飲み「おいしい!」と言う。
 
その何気ない表情を撮ろうとすると、すかさずモデルのようなポーズを決めるのが可愛らしい。小中学生向けのファッション誌を読んで研究しているらしい。こういうところが女子と男子の差だなあ。おかげで素の彼女を撮るのがちょっと難しかったけれど、それも含めて十分魅力的です。
 
 

失礼かなと思ったけど、結婚するならどんな人がいいかと聞いてみた。
 
「わたし理想高いんですよ」と前置きした彼女は、高身長、イケボ、マッチョすぎない、などなどのスペックを語り、最後に付け加えた。「でも自分が好きになれる人だったら、なんでもいいんです」
 
……これはもう惚れてまうやろ。 

おーい、将来彼女の夫になるどこかの男子よ。君は幸せ者だぞ。

 

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