奈良交通室生線室生寺 15:23

 
 
 
  
時おり感じる川風が涼しい。澄んだ水が流れているのに、川で遊ぶ人の姿がまったくない。
 
室生寺から4kmほど歩くと、川の両側に迫っていた山が少し開けて小さな集落が現れる。
  
そのはずれに杉の木を切り開いて作られた小さな別荘があり、それをママのご両親が買ったのは30年前のこと。
 
「平成2年。ちょうどバブルやったから」と父上は笑う。
 
それ以来、家の前の土地をならして畑にしたり、花を植えたりして楽しんできた。二人にとっては自分好みにカスタマイズされた秘密基地のようなものだったろうと思う。
 

 
ママは子どもの頃からそこに毎年夏に遊びに来ていたわけで、夏の思い出といえばその別荘になるのだろう。
   
「もう来年は来れへんのよ」とママは小さな子どもたちに言うが、彼らは大人の感傷に付き合っている暇はない。ただひたずらにビニールプールで水遊び。
 
 

30年という時間は、振り返るには十分な長さである。
 
その時間の中の無数の思い出に対して、僕が今日1時間で撮る写真はどれだけ応えられるだろう。
 
そんなこと考えたって仕方がないのだけど、考えずにはいられない。
 
 
 
山の中は思いのほか涼しい。開け放した窓から風が通る。「エアコンいらないんですよ」とママは言う。
 
夜になったら子どもたちはここで花火をするらしい。




子どもたちと手を振って別れて、また室生寺まで1時間歩いてバスに乗る。
 
のどかな山里の風景は美しい。初めて来た場所だからなおさらそう思う。
 
山の斜面に古そうな家が点在している。上から見下ろしたらいい景色だろうなあ。登るのたいへんそうだけど。
 
駅に着いて電車をやり過ごして、大野寺の川べりに行ってみた。
 
大阪の鶴橋から1時間で水のきれいな川に出会えるというのが驚きだ。きっと秋になったら紅葉狩りの人たちで賑わうのだろう。

 













 

撮影した写真はこちら。