予讃線丸亀駅 13:14
撮影終わって神社から帰ろうとすると、当然のように「駅まで送って行きましょうか」とママに言われる。
ありがとうございます。いえ大丈夫です。
「どうやって駅まで行くんですか」バスです。「バス停がこの近くにあるんですか?そこまで歩くでしょ」歩きますよ。「そんな荷物(カメラバッグ)持って……(車に)乗ってください」いえバスに乗りたいんです。「……バスに、乗 り た い」ママは僕の目を見て繰り返す。理解できない人間が目の前に存在するのを自分を納得させるために。
帰りのバスの時刻は調べてあった。付近の地図もだいたい頭に入っている。
それでも、途中でヒマワリとか田んぼの写真を撮っているうちに時間は過ぎて、横断歩道の信号を待っている間に、予定していたバスは行ってしまった。
次のバスは約2時間後だが落胆することはない。駅までわずか2.5kmほど。30分も歩けば次のバスより先に着く。
今日はこんなに天気が良いのだから歩かなくては損だ。初めて訪れた街を歩くのは楽しい。丸亀名物骨付き鳥のお店「一鶴」は店の前に短い列ができていた。人気があるんだなあ。
途中で丸亀城なんかどうでもいいくらいの大きなタイル壁画のある病院を見つけたのが最大の収穫。この作品はたぶん誰も気にしてなさそうだけど、十分鑑賞に値する。
立派なアーケードを持つ駅前商店街は、見事にシャッター街となっていた。
錆びたシャッターを半分下ろして閉店している惣菜店の看板には「おとうさんごめんなさい」というキャッチコピーが書かれている。食事を作らないで惣菜を買って帰ることに対する主婦の罪悪感を表したのだとわかるのは、僕が昭和生まれだからか。商店街は時代の移り変わりについて来れなかったのだな。
駅に着いて、飲食長屋の端っこにあるお店で中華そば(500円)を注文。
店のカウンターには冷蔵ケースもあって、元はお寿司屋さんだったのかもしれないが、今ではうどんや天ぷらなども出すらしい。
出てきたのは錦糸卵が乗っている以外は一見ごく普通の醤油ラーメン。が、ひと口すすって驚く。煮干しとは違う魚のアラ出汁が効いたスープ。お吸い物みたいだなあと感動しながら食べるラーメンおいしい。これは丸亀に来たら食べる価値はあるかも。
お宮参りの赤ちゃんは概ねご機嫌で、ぐずることもなく参拝を終えた。
抱っこするママが辛そうだったので、場所移動も最小限にして、境内での撮影は10分ほどで終了。赤ちゃんだけの写真をご自宅で撮っておいてよかった。
いつもそうなのだが、撮影を依頼されるママはお宮参りになんとなくほんわかしたイメージで来て、こんなにたいへんだと思わなかったという感想を持ち帰る。
それでも今日はとても幸運だった。真っ青な空に白い雲が浮かんで、さほど暑過ぎない、秋晴れのお天気だったから。