東海道本線稲枝駅 17:12


 
 

 
琵琶湖には白波が立っていた。いつもは穏やかな湖畔の、あまりの風の強さに家族はたじろぐ。 
 
晴れててよかったという考えはあっという間に消え去る。撮影のときに風は雨よりも厄介である。

 

家族には三人の子どもがいる。十歳の女の子に八歳と三歳の男の子。それぞれに個性があって、見ていて楽しい。 
 
一番取っ付きやすいのは真ん中のお兄ちゃん。僕=遊べる人、と認識すると、虫取りや鬼ごっこに誘ってくれる。弟くんは甘えん坊で末っ子気質満載。自分の好きなことしか眼中にない。物静かなお姉ちゃんは長女らしく目配りのできるしっかり者。
  
そういうわkで、一人ずつ撮るのはなんの問題もないのだが、いざ一緒に撮ろうとすると男子二人が好き勝手に動いて、ぜんぜんまとまらない。
 
長女である女の子は撮影のことを理解してじっとしていてくれるのだけど、大人びていて、ふざける僕を醒めた目で見つめる……。
 
きっとふだんの日々は慌ただしく賑やかなのだろう。彼らの「とある日」を撮ってみたいものだと思ってしまう。 
 

 
そういえばこの撮影は、パパとママの結婚10年の記念撮影でした。おめでとうございます。 
 
過ぎてゆく日々の中の一日を写真に留めようと思い立ってくれたことに感謝。


 
 
撮影終わって稲枝駅までまた歩く。見渡す限り田んぼが広がる近江平野。
 
ところどころに小さな集落が点在しており、そのひとつ一つには必ずこんもりと木々に囲まれたお社(やしろ)がある。その光景を見ると、人はその土地に根ざして生きるのが本来の姿なのだろうと思う。ふらふら旅しながら仕事する僕は、どう考えてもまっとうな人生にならぬような気がする。
 
色づいた田んぼは稲刈りの真っ最中で、コンバインが休みなく動いている。