山陽本線福山駅 13:52
昨日に続いてスタジオで色打掛の婚礼写真を撮る。
造船所で働く新郎に休日は何をするのかと尋ねたら、「家事やってます」と無骨な容貌に似合わない答えが返ってきた。
互いにいい人と巡り会えたのだろうな。
式はしないそうだが、せっかくなのだからどこかの神社で家族だけで挙げたらいいのにと思う。ご両親もきっと喜ぶだろう。
今日は昨日にも増して暖かい。
福山駅前にアヒルがいた。赤いバンダナをしており、かたわらにスナフキンのような帽子をかぶったおじさんが地面にぺたりと座って酒を飲んでいる。
アヒルは「あーちゃん」という名前らしい。アヒルのあーちゃん、安直なネーミングである。
おじさんは通りかかった女の子に「触ってっていいよー、噛まないから」と声をかけるが、当然のごとく無視される。
彼はいったい何をしてるんだろう。
アヒルは芸を披露するでもなく毛づくろいをしている。投げ銭目当てにそこにいる、というよりただ日向ぼっこをしているように見える。
写真を撮っていいかと尋ねると、彼はどうぞどうぞと言いながら、「拡散してよ。アフラックより有名にして」と続ける。「そしたらがっぽがっぽお金入るから」
どこまで本気なのかわからぬが、アヒルのいる生活が楽しいのだろう。
少し世間話をして立ち上がると、彼は「月刊あひる通信」なるものをくれた。
カラーコピーされたA4の紙。手書きでびっしりアヒルの生態が書いてある。
ずっと空をみつめてじっとしていることがある
夢をみるのか寝ていてクワックワッということがある
あひるの夢ってどんなん?
(月刊あひる通信の本文より抜粋)
アヒルよりも彼が書いた文章のほうが面白い。
人生を楽しむって、たぶんこういうことなんだろうな。