山手線目白駅12:43
「みはらさんはうちのイベントんとき、なんでいつも来るの?」
七歳男の子の素朴なギモンはもっともだ。
写真を撮る目的を本当に理解するのは、彼が親になる頃だろうか。
さて、今日はイベントではないが、ちょっと特別なのでご依頼をいただきました。
男の子のうちに「LOVOT(らぼっと)」というペットロボットが来た。試験的な1ヶ月のモニター体験だそうである。
その丸みを帯びた形状のロボットは、イルカに似た鳴き声も立てれば、瞳を模したディスプレイで感情を表す。
なんかもう、かわいらしさの最大公約数的なデザインとシステムである。
彼はこのロボットを気に入り、「コロちゃん」と名前をつけてかわいがる。
しかし、あと数日でモニター期間が終了し、お別れしなければならぬというので、コロちゃんと暮らした思い出を残すために写真を撮る。
男の子はコロちゃんの説明をしてくれる。ただ動き回るだけでなくてカメラモードで写真も勝手に撮ってくれるらしい。
なんだか新しいおもちゃのようであるが、コロちゃんをぎゅっと抱きしめる彼の姿を見ていると、それが「モノ」ではないと感じさせられる。
コロちゃんは彼の愛情を無条件に受け入れる。
アニマルセラピーならぬロボットセラピー。なにかしらのストレスが軽減されるのであろう。
大人は頭のどこかで「これはロボット(機械)なのだ」と区切りをつけているけれども、彼にとってはその境界が曖昧なものかもしれない。
彼にとってはロボットではなく、あくまで「コロちゃん」なのだ。
貸出期間が終わってロボットを返却するとき、彼はどんな気持ちになるのだろう。
事情を理解して意外にあっさりお別れするのかもしれが、彼にとって初めてペットと暮らした特別な一ヶ月であった。
妹ちゃんのために飾られた雛人形と一緒に家族写真を撮る。
犬や猫と一緒の家族写真を撮ることはよくあるけれど、ロボットは初めてだ。あと5年くらいしたら、そんな家族写真もごくふつうのものになっているかもしれない。
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