撮影終わって三木の街を歩く
撮影終わって三木の街を歩く。
例にたがわず駅周りの市街地はすっかり寂れてしまっている。神社の参道近くに「KISHIDA」と壁にサインのある廃ビルが圧倒的な存在感を出していたのだが、元はなんだったのだろうか。屋上には風力計の跡が見えて、想像力を掻き立てる。
三木上の丸駅に通じるアーケードには「ナメラ商店街」という名前がついている。ナメラは滑原(なめはら)から来ているらしい。意味は川筋にある原っぱのことだそうです。
日曜日なのに開いている店はわずかで、もはや商店街の体を成していないが、屋根に覆われた薄暗い通りを歩くのは洞窟探検にも似て楽しかった。
三木上の丸駅はホーム一面だけの小さな駅。
ホームのベンチに東南アジア系に見える若い男が座っていて、キヤノンの一眼レフをいじっていた。顔を上げて同じようにカメラを手にした僕を認めると、はにかんだ微笑を浮かべる。
同好の士と思ったのであろう。「何撮ってますか」と尋ねてきた。
どこの国かは聞かなかったが、日本に来て半年だという彼は日本語を上手に操る。しかし写真の知識はほとんどないようで、露出補正機能を教えてあげたら、驚いていた。
異国の地で働きながら、趣味で写真を覚えようとする彼が好ましく思える。電車が来るまでの間、もっと話せればよかったな。