多度大社は本殿の背後に深い森を従えて

 

 
  
多度大社は本殿の背後に深い森を従えて、幽玄な趣。誰もいないような季節に一人で来てみたくなる。
 
創建ははっきりせず神代まで遡るらしい。それほど歴史があるにもかかわらず、門前町はずいぶん寂れてしまっている。みな車で来るから、多度駅から歩く人は皆無である。 
 


行きがけに多度駅から乗ったコミュニティバスの乗客は僕一人だけだった。運転士さんにふだんの様子を聞いたら「さっぱりだね」と言う。土日はさすがに観光客が来るでしょうと言うと、バスは運休になるという。それほど人出がないのか。
  
元は土産物屋なのか「桔梗屋」と看板を出した古いお店の中を覗くと、一台の朽ちた人力車が無造作に置かれていた。明治か大正期のものではなかろうか。
 
参道と川を隔てた反対側には、古い木造校舎が残っていた。戦前から残る建物である。郷土資料館になったものの、それも閉鎖されてしまったから、地図にも載っていない。かなり傷んでおり、取り壊されるのも時間の問題であろう。
 
貴重な歴史遺産がたくさんあるのに、多度はすでに忘れられた町であった。