風がない。曇り空の重たく湿った大気は日本海とひと続きになって動かない。
駅から少し歩いただけで、山陰特有の湿気に汗が噴き出す。
じっとしていれば、そこそこ過ごしやすいんだけど、撮影するときになったらそうもいくまい。
二人目の赤ちゃんができて、マタニティフォトを撮る。
二歳の女の子は遊んでくれなくて固まってしまい、パパにしがみつく。
なんとなく予想していたから、無理のないように撮影を進める。
ときどき気が向いて笑ってくれたらいい。
撮影にはママの妹さんが三歳の娘を連れて香港から遊びに来ていた。もちろん一緒に写真を撮る。
彼女は人見知りしないので、日本語がわからなくても遊んでくれる。
個人的な感覚では、五歳くらいまでなら言葉の壁はあまり問題ではないです。
みんなで汗だくになりながら記念写真を撮って、小さな手とタッチしてさよなら。
まだ11時前である。パパとママにとって今日は長い日曜日になりそうだ。
山陰本線鳥取駅 6:48
浜坂行き。
乗客は僕一人だけ。諸寄までの50分間、誰も乗ってこなかった。日曜日とはいえ厳しいものがある。
山陰本線浜坂駅 7:53
折り返しの豊岡行きに乗り換え。特急も停まる駅だが、朝夜は駅員無人である。
キハ47には扇風機のスイッチが残っていた。さっそくONにして風を浴びる。
久しぶりに余部鉄橋(今はコンクリート橋)を渡る。30年前、ここで寝台特急「出雲」を撮ったのを思い出す。あの頃にデジカメ持って戻りたい。
兵庫県香美町香住区七日市 11:37
本日の撮影終わり。二歳女の子のいるマタニティフォト。
香住の街歩き。道端に洗濯物が干されている。昔の酒屋さんのショーウィンドウに飾られた「くまのプーさん」のぬいぐるみとヒマワリが夏を伝える。
香住駅前「入船食堂」の中華そば。
やる気なさそうな見た目を裏切って、とてもおいしい大衆食堂のラーメンだった。
山陰本線香住駅 12:30
尾道に帰ります。昭和な駅にはキハ47がやっぱり似合う。
和田山で播但線に乗り換え。
駅前の通りが無人すぎて異世界に来たみたいだ。
播但線和田山駅 14:04
寺前行き。キハ47に運転台をくっつけて単行運転ができるようにしたキハ41の顔は独特だ。
緑の中をゆく列車。夏のローカル線の雰囲気がたまらなくいい。
寺前から姫路行き103系電車に乗り換え。ドア上に地元の高校生が描いたイラスト路線図があって楽しい。こういうの他の線区でもやったらいいのに。
晴れた日曜日午後の空いた電車に揺られる至福の時間。