尾道 19:13

 
 

 
夕凪の海辺は今日は涼しい。
 
尾道水道を渡船が行ったり来たりする様子をぼんやり眺めながら飲んでいるうちに、あたりはすっかり暗くなる。 
 
それでもまだ夜8時前なのだ!なんと素晴らしい季節なのだろうか。  
 
尾道水道に沿って海沿いに遊歩道があるのだが、そこをテラス代わりにしている飲食店はないし、眺めのいい2階で飲ませてくれる店もない。非常にもったいない気がするが、それだけ人が少ないということです。
 
今日はとくに商店街を歩く人も少なかった。
 
 

堤防に座ってお酒を飲んでいる時間は楽しいが、二人ともそれなりにいい歳であるし、あと何年こういうことができるだろうと思ってしまうのだが、早すぎるだろうか。
 
 

「メメント・モリ」という言葉を初めて知ったのは、中学校か高校の図書室にあった藤原新也の写真集であった。
 
それまでにも、いつか必ず来る人の死というものに漠然とした怖ろしさを持っていた。
  
誰かに長生きしてほしいと願うのは、裏返せばそこに必ず死があるということを知っているからである。
 
しかし、それを表に出さないという選択は、はたして正しいのだろうか。 
 
その事実は万人誰もが知っているのだから、ことさらに言い募る必要はないのかもしれないが、どうしても意識してしまうのである。 
 
同じことは猫でも言えるんですけどね。猫のほうが寿命が短い(とも限らないけど)から。
 
だから家に帰ったら、面倒くさくてもすり寄ってきた猫の背中を掻いてやる。その猫が死ぬときに後悔したくないので。