内房線保田駅 17:07
夏の終わりの海は人がいないからいい。
外房に比べれば内房の波は子どものようにおとなしい。
それでも11歳の少女は水に濡れまいと一生懸命に波から逃げる。
子犬が海とじゃれあっているかのようだ。
ママと変わらないくらいに背は伸びたが、まだ高くなりたいと言う。
聞けば夜10時には寝てるそう。
成長期だからもっと伸びるよ。よく寝ると身長は伸びる。そう言うと、遅くまで起きてる長兄は背が低いそうで、次兄はずっと寝てるから背が高いと彼女も言う。
二人の兄は高校生である。
三人兄妹の末っ子女子だから、かわいがられて育ったのだろう。多分に甘えん坊である。
そろそろ帰ろうかと促すと、彼女は濡れた足についた砂をどうにかしたい。
ママを呼んで近くに靴を置けと言う。しかし靴にも砂がつくだろう。
結局熱い砂の上を歩いてコンクリに座らせて、ペットボトルで川の水を汲んで彼女の足裏についた砂を流す。
とても夏っぽい。
ママはしょうがないわねえという感じで笑っている。
まだまだ子どもらしさが残る彼女がかわいいのだろう。
田んぼの中の畦道で草の感触を嫌がって「田舎は何もないからいや」と言う都会っ子も大人になってゆく。
彼女の見る世界も広がってゆくだろう。またいつか青旅で何もない田舎に行こう。
次は何かを見つけられる。たぶん。