尾道 16:32
国道2号線から急な石段をようよう上ると、桜咲くお寺の境内にたどり着く。
観光客がちらほらやってきて写真を撮るが、都会で見られる雑踏はどこにもない。
この時期に七五三の前撮りを決めたママは慧眼である。
七歳と五歳の姉弟は、ほんのわずかな時間でも惜しむかのようによく遊びよく笑う。
天真爛漫とはこういうことかと思う。
彼らのおばあちゃんは石のベンチに座って二人の孫の姿を眺めている。のんびりとしたいい時間が流れる。
ひとしきり遊んで石段を降り、少し歩けば海に出る。
そのロケーションが尾道らしいところ。
姉弟は青い海を背景に立つ。
これからもっと大きくなるんだろうな。遊んでもらえるのも今のうちだけだ。
それがわかっているから今の時間が愛おしい。
大人ができるのは、あとで写真を見てため息をつきながら懐かしく思い返すことだけだ。
「この頃はかわいかったよね(今もかわいいけど)」と。