日豊本線日向市駅 11:21
昨夜は僕のほかに4人の宿泊客があったようだが、朝8時に宿を出るときには、朝食が並んでいたはずの食堂のテーブルの上もきれいに片付けられて、もう誰もいなかった。
林業関係者なのだろう。朝が早いのである。
日向市行きのバスはゆっくりと川沿いを下る。
途中の塚原(つかばる)というバス停でトイレ休憩。
ここは宮崎交通のバスの車庫を兼ねた乗務員用詰所になっている。というのを、運転士さんに教えてもらった。2階のベランダには洗濯物が干してある。周囲に飲食店もほぼない山間の小さな集落である。食事は自炊してるんだろうか。
バスで椎葉村まで行く旅行者はほとんどいない。「どっから来たとですか」と彼に聞かれた。「観光で?」僕の風体からすれば仕事とは思えぬだろう。
「何を?撮るんですか」よく聞かれる質問だが、何も知らない人に説明するのは難しい。
家族の写真を撮るんです、と答えてもふーんともはーんともつかない反応でわかってくれてるとはとても思えぬのだが、仕方がない。
出張撮影フォトグラファーのドラマとかあったら世間の認知度も上がりそうだけど、どこかのテレビ局が作ってくれないかな。
朝の椎葉は爽やかな空気だったのだが、日向市まで下りてきたら真夏のような暑さであった。道端でアガパンサスが揺れている。
羊雲の浮かぶ青空を眺めながら列車に揺られているだけで、時間があっという間に過ぎてゆく。
いつも仕事で旅をしているけれども、旅するための旅をしていないな。