山陽本線岡山駅 12:02
駅の方から走ってきた岡電バスが前に二本の日の丸を交差させている。
今日は旗日だ。建国記念の日だった。土曜日に紛れてると忘れてしまう、などと書いたら叱られそうだけど、元は明治時代の政府が決めた日だし、確たる歴史的根拠があるわけでもない。
八ヶ月の赤ちゃんと、七歳と四歳の姉弟の家族写真を撮る。
赤ちゃんははじめ人見知りで泣かれてしまうが、そのうち慣れて遊び始める。
ハーフバースデーでも一歳でもないし、2月に家族写真を撮るのは珍しいからママに理由を聞いてみたら、スタジオであまり笑わなかったかららしい。
家の中にはそのときのものらしい写真が飾られていたが、いい写真であった。
おしゃれな背景と衣装のスタジオ写真に比べると、出張撮影の写真は地味だなあとたまに思う。飾るならおしゃれな写真のほうがいいだろうし。
いつものように子どもたちと遊んで、赤ちゃんが眠くなったところで終了。写真を気に入ってくれるといいんだけど。
お家を辞して駅に向かう途中にスーパーがあったので、尾道に帰るついでに夜ごはんの材料を買う。
精肉コーナーに砂ずり(砂肝)があった。こないだ「いいちこ」の広告サイトで見た「砂肝炒め」を思い出して買ってみる。
あとはチルドの浜松餃子にネギやトマト。
これでもう尾道に帰ってから買物に出かける必要がない。
岡山から尾道までは山陽線で1時間20分である。冬だし砂肝のために保冷用の氷も袋に入れたし大丈夫だろう。
福山行きの電車は混んでいた。ボックスシートに空きを見つけて座る。スーパーのレジ袋は網棚に乗せる。
電車の中では仕事して福山で三原行きに乗り換えれば20分で尾道に着く。
改札を出てから今日の晩ごはんのことを考える。砂ずりと餃子……福山で降りるときに忘れてきた。
福山駅の忘れ物センターに電話してみるが、まったく繋がらない。仕方ないので電車に乗って行ってみる。
高架下にある忘れ物センターのおばさんスタッフに尋ねるもレジ袋は届いていなかった。
電車は福山で岡山に折り返す。岡山駅の忘れ物センターに電話してもらった。「それらしいのがあるそうです」と受話器を持ったおばさんは僕に言う。「中身は、はいトマトとネギ、かいわれ、あと砂ずり……」
間違いない。スーパーで砂ずり買って電車に乗る人はそんなにいない。
「どうします?」とおばさんは僕に尋ねる。
買物袋の中身の総額は1500円ほどである。福山から岡山へ往復するだけで2000円はかかる。取りにいかなければ廃棄処分だろう。せっかく買った砂ずりを無駄にするわけにはいかぬ。今から取りに行きます。
岡山駅の忘れ物センターも福山と同じようなおばさんスタッフがいて、奥から懐かしいレジ袋を持ってきてくれた。砂ずりの保冷用の氷は溶けてしまっている。
尾道に帰ったら砂ずりと蓮根炒めを作る。砂ずりはしっかり火を通せば問題ない。