山陽本線倉敷駅 15:04
美観地区の観光ガイドはおじいさんで、手慣れた様子で二人の女性観光客を案内し、スマホで記念写真を撮ってあげている。
観光地化されたテーマパークのような古い家並みにはあまり興味がないのだが、まるで録音された自動音声を聞いているような(毎回おなじ台詞を言うのだろう)彼の口調を側で拝聴するのは楽しかった。
たぶん明日になればその説明のほとんどを忘れてるだろうけど。
三ヶ月の赤ちゃんを抱っこした若い夫婦が一つの傘でやってきた。
お宮参りに行ったお寺は出張撮影禁止になったそうで、倉敷の古い街並みで写真を撮ることにしたという。
秋には紅葉が映えるお寺だったのだが、昨今の出張撮影をめぐる状況だと致し方ないのだろう。
雨は小降りで気になるほどではない。風がないのも助かる。
撮影では雨より風のほうが大敵だ。
公園の緑と、美観地区の街並みを背景にして写真を撮る。
赤ちゃんはもちろん覚えていないだろうけど、家族の初めてのハレの日がちゃんとした写真になって残るというのは、結構大切なことなんじゃなかろうか。
1時間の撮影の終わり頃に、まだ撮りたいものがあればどうぞと言うと、「もういっぱい撮ったからいいです」とママは言う。
ずっと赤ちゃんを抱っこしての撮影は想像以上にしんどいものである。