尾道 16:54

 
 

  
夕方5時になる前に駅前郵便局に行って1円切手3枚を窓口に返す。
 
パクってはいない。

昨日ようやくくじ付き年賀状の当選番号を確認して、3等の切手シート2枚を受け取りに行った。

そのうち1枚は、使わなかった63円の年賀切手であった。
 
窓口の女性は引き出しからマニュアルのような冊子を取り出し、指先でテキストをなぞりながら交換方法をたどたどしく確認する。
 
そして使わなかった63円の年賀切手を63円の普通切手と3枚の1円切手にして僕に返した。
 
年賀切手は63円の額面に3円の寄付金が加算されている。それを1円切手3枚にしたのだろう。



夜7時前、家に電話がかかってきた。「尾道駅前郵便局ですけど」男性の声である。局長さんだろう。 

1円切手3枚を渡したのは間違いだったから、明日引き取りに行きたいという。住所を伝えても、路地の奥まで迷わず来れる人はまずいない。自分が出向くほうが手っ取り早い。

わずか3円のやりとりであるが、金銭を扱うところは1円の狂いもあってはならぬのだろう。

 

1円切手3枚を持ってゆくと、窓口の女性はすぐにわかったようで受け取り「ちょっとお待ちください」という。
 
奥の席にいた局長さんが立ち上がって「すみませんでした」と言いながら、いかにも粗品然としたハンドタオルを差し出すので受け取る。
 
3円の代わりのお駄賃にふさわしい。