京浜急行電鉄本線京急田浦駅 11:36
駅の近くの昭和な雑居ビルの一階に、これまた昭和からあると思われるラーメン屋さんがあって、開店前なのか半分シャッターが下りている。
開いたガラス戸の向こうから鍋の音が聞こえるから仕込みをしているのだろう。
あと30分待てば開店だ。食べて行こうかどうしようか迷って、駅に向かう。
食べなくっても平気だし、もし食べたら夜になってもお腹が空かないだろう。
こんな葛藤をせずとも、好きなだけラーメンを食べても平気な人生でありたかったと、少しだけ思う。
一歳の誕生日の迎えた女の子はママに抱っこというかしがみついている。一人で座らせると泣く。
ママはあきらめたように「泣いてる顔でもいいです」と言うが、それは絶対に撮らない。怖がって泣いてる子どもの写真を見たい親はいない。
子どもの様子を見ながら少しずつ距離を縮めてゆく。そうして一人で座って遊んでいる写真が撮れる。
女の子は眠かったのか表情に乏しかったが、ママが準備した誕生日の飾りと写真が撮れたので、最低限のハードルは越えられた。
女の子には七歳のお姉ちゃんと四歳のお兄ちゃんがいる三姉弟。
三人をダイニングテーブルに座らせて写真を撮る。一歳の末っ子ちゃんを真ん中に挟んで両側から支え合う。
似たような兄弟カットを何度も撮ってきたから思う。
今だけなのだ。こんな写真が撮れるのは。
子どもは日々アップデートされて決して昔には戻らない。
写真だけが、たしかにこんな日があったことを教えてくれる。