尾道 12:22

 

　

ふわりとした雰囲気の彼女である。

　

メイクを施されている間、鏡の中の自分がどんどん変わってゆくのを不安げに眺めている。

　

広島の大学に通っているという。一人暮らしを満喫していると思ったら、寮に住んでいるらしい。二人一室とか。今どき珍しいのではあるまいか。

　

成人記念の前撮りは、たいてい親の希望である。

　

振袖を着る本人は写真を撮ることはわかっていても、なんとなく雰囲気に流されるままになっている。

　

それは昔も今も変わらないのだろう。

　

フィルム時代の頃は町の写真館で、ヘンにかしこまった写真を撮らされて、それがまったく気に入らなくてお蔵入りになっている人も多かろう。

　

彼女はいつか今日の写真を見返してくれるだろうか。

　

将来がはっきりしない大人の入口にいた自分の姿を見てどんなふうに感じるだろう。

　

「二十歳の私」を好きになってくれるような写真になっていると思います。