宮崎県椎葉村下福良 12:49


  
 
 
 

雨に降られながら、ご自宅から数キロ離れた山の中にある「大久保の大ヒノキ」を見に行く。
村道を離れて落石が転がっている山道をゆくと、一軒家の庭先を駐車場にしてあって、トイレまである。遊歩道も整備されているがコンクリで固められた斜面の下は赤茶色の土が剥き出しになっていて、いつか崩れる日が来るだろうと思う。
  
見えるものは深い森に覆われた山だけで、木々から滴る雨に濡れながら歩くと、突如として雄叫びを上げる熊のような巨木が姿を現す。首を90°にそらして見上げる木の持つ力に圧倒される。
   
「まだ見つかってないだけで、(山の中には)ほかにもっと大きな木がありそうな気がするんですけどね」とパパは言う。その通りかもしれない。彼はへき地医療に携わる医師である。家族が椎葉村で暮らして3年目になる。ヒノキの全体を入れて家族写真を撮ると人が米粒のように小さく写る。そういう写真はふだんあまり撮らないようにしているけれど、これは記憶に残すため。
  
もうすぐ一歳になる赤ちゃんがあまり馴れてくれなかったのが残念だけど、思い返せば3年前のお兄ちゃんもぜんぜん笑ってくれなかったっけ。兄と妹はよく似ている。