総武本線本千葉駅 18:08
卒業式の日の大学キャンパスは思いのほか静かであった。
というのも、まだ卒業式が終わっていなかったからであって、待合せ場所に現れた依頼主の卒業生に案内されて講堂に入ると、ステージを埋めた卒業生の記念集合写真を撮っているところであった。
それが終わると卒業生は西陽射し込むキャンパスに出て、それを研究室やサークルや部活の後輩たちが取り囲み、ささやかなセレモニーと写真を撮り合う歓声が響き渡る。
若さって、それだけで何事にも替え難い特権なんだねえ。
その場所から遠く離れ去ってみてから気がつくのも悲しいのであるが、何にせよそういうものなのだろう。後悔はしていない。ただ笑いさざめく彼らと同じ感情をもう一度味わってみたいなと思うだけです。無理だけどさ。
研究室もサークルも違うという男女4人の友人たちは喧騒の中を抜け出して、キャンパス近くの城跡で記念の写真を撮る。
卒業してしまえば、進路はそれぞれ違う。
はじめのうちはたまに会って近況を報告しあっていても、そのうち離れ離れ、疎遠になってゆくだろう。しかし二十代前半の、人生で輝かしい時期を一緒に過ごした記憶は忘れられないものである。それは僕が保証する。
ああ、そうだ。映画「紅の豚」で加藤登紀子も歌っていたではないか。
今でも同じように
見果てぬ夢を描いて
走りつづけているよね どこかで
ずっと時間が経っていても気持ちはどこかで繋がっている。