和歌山バス90系統鳴神線中通り 16:04
撮影に伺うと「ここまでどうやって来られたんですか」という質問をよくされる。
車でなければ鉄道かバスなのだが、おそらくその質問をする人たちにとって車以外の選択肢はないのだろう。
公共交通って便利なんだけどなあ。ただ座ってるだけで目的地(の近く)まで連れて行ってくれるし、あとは歩けばいいし。
和歌山バス90系統鳴神線は1時間に1本。
前もって時刻を調べているから慌てることもない。バスが来る20分前にお家を辞して、ぶらりと歩く。
狭いバス通りから横道に入ると、これはこれは……と心の中で感嘆の声を上げた。
昭和30年代頃に作られたと思われる集合住宅群が現れた。こじんまりとしたメゾネットと長屋が並ぶ。二階の窓はアルミサッシだが、台所と玄関周りは木枠である。かつて東京にあった同潤会アパートを思い出させるたたずまい。渋いすぎる。
しかし残念ながら時間がない。この先二度とここに来ることもないだろう。後ろを振り返りながら、バス停に向かう。
ニューボーンフォトの撮影にママのご実家へ呼ばれた。
赤ちゃんは生まれて13日目。眠そうにしながらも寝てくれずに泣く。夜泣きもするらしい。パパとママはきっと寝不足だろう。
顔を真っ赤にして泣かれるとフォトグラファーは困るのだが、泣き顔を見ていると、今この子は一生懸命に生きているというのが伝わってくる。
ニューボーンフォトは赤ちゃんの生命力を感じる撮影だ。
撮影を中断してミルクをあげたりしつつ、なんとか無事に撮り終えてほっとした。
バスで和歌山駅に戻って、紀州路快速で大阪に出て尾道へ。
和歌山駅は中央改札口の前が1番線ホーム。改札口から列車が見えるのが鉄道駅らしくていい。
かつてはそれが駅の定番スタイルだったが、近年は高架駅と橋上駅が主流になってしまった。乗り換えなどの効率はいいのかもしれないが、なんとなく風情に欠ける。
改札口の前が1番線、という駅を挙げてみる。
根室本線釧路駅
東武伊勢崎線春日部駅
東海道本線京都駅
紀勢本線和歌山駅
山陽本線尾道駅
予讃線松山駅
このほかにもまだあるだろうけど、その数は年々に減っている。
個人的には、佐世保線早岐駅が橋上駅舎になってしまったのが残念であった。
和歌山駅はのそれは、残してほしい駅のたたずまいである。
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