京都市交通局東西線蹴上駅 12:04
お正月三が日の京都の街は賑やかだ。
平安神宮前の通りには屋台が並び、呼び込みの声にそぞろ歩く人たちの話し声でさざめいている。
風もなく穏やかな空からは、冬の陽射しが斜めに降り注ぐ。
愛知県に住む実家の両親を招くように、二人の娘の家族が集まった。
それぞれ別の場所で暮らしているから、一堂に会するのは久しぶりのことらしい。お正月でなければ、実現しえなかったかもしれない。
娘二人に囲まれた父上は終始ご満悦の様子。
かつての家族の思い出話をしている様子を動画に収める。
父上はアウトドアというか登山が好きらしく、若い頃はずいぶん無茶な山登りをしていたらしい。ビーチサンダルで登山したという話をこともなさげにする。山で死にかけたこともあったという。
僕は体を動かすことにあまり興味が持てないので、危険な目に遭ってもまた山に登る人の気持ちがわからぬ。
わからないけれども、僕の知らない魅力というか楽しみがそこにあるんだろう。
子どもの頃の娘たちを連れて山に行った話をする。ずっと話している。
昔の思い出というのは、子どもが大切にしているおもちゃ箱のようなものだ。
撮影終えて蹴上駅まで歩いて戻る途中で、通りすがりの女性に不意に声をかけられた。
誰かと思えば、昨秋に写真を撮った家族のママだった。よく気がついてくれたと思う。
ご両親とお祖母様まで一緒なのを見てとる。これは写真に残しておくべきだ。写真撮りますよ。
歩道の端に寄ってもらって、道端で一家の写真を撮る。出会った場所もよかった。
今日はお祖母様の米寿のお祝いだそうだ。新年早々めでたいことである。