東京地下鉄東西線浦安駅 12:22
そのお家には女の子が生まれてから何度かお邪魔して写真を撮った。
弟くんが生まれ、そのうちベビーサークルがいつの間にかなくなり、おもちゃが増えた。
そして先月には新しいマンションに引越しを済ませた。
パパとママが結婚してから7年住んだマンションの一室は今日でさよならである。
「たいへんだったよな……」パパはがらんとした部屋を見てつぶやく。
赤ちゃんが生まれて子育てしながらの5年間は無我夢中で過ごしたのであろう。
しかし、二人の小さな子どもたちは感傷に浸る大人の気持ちなぞちっともわからない。
「もうここには来れないんだよ」とパパが言っても「なんでー?」と無邪気に尋ねる。
そういうものだ。子どもたちには「今」しかないのだ。過去を振り返るのはもっと先でいい。
撮影の終わりに、元はリビングだった何もない部屋で弟くんが言った「ありがとう、おうちくん!」
家族の物語はまだまだ続くが、第一章は今日で終わりだ。
いつかページをめくり返すときのための今日の写真。