尾道 12:54
穏やかに晴れた小春日和の正月二日。
午前中、近所のお寺に呼ばれてご住職一家の写真を撮る。
広島市に嫁いだ娘さん家族も集まっての写真。お子さんは高校生だろうか。この先正月に全員揃うこともあまりないかもしれない。
昨今、記念写真を撮るときに困るものがある。マスクである。
もちろん写真を撮るときには外してもらうのだが、その外したマスクのやり場が問題だ。
後ろ手に隠す人が多いが、立ち姿で不自然になりがちだからポケットにしまってくださいと言う。
それでひと安心かと思ったら、突っ込んだはずのマスクの紐がポケットからびろんと出ていたりするから気が抜けない。
撮影のテンポも悪くなる。
小さな子どもが一緒のときなどは、僕が子どもを笑わせるのに手一杯になってしまっていて気づかないこともある。
日常で万人が身につけるようになったマスクは、出張撮影のフォトグラファーにとってまことに厄介極まりない。
ご住職の家族写真は、本堂の中で4カット撮っただけで終わる。
枚数も少ないので、家に帰ってさっそくレタッチに取りかかる。
と、ここで気がついた。ご住職の奥さんが、外したマスクを右の袖口にブレスレットのように留めているではないか。
なぜ撮る時に気がつかなったのか。後から悔やんでももう遅い。仕方なくPhotoshopを立ち上げて消すことにした。余計な手間がかかる。
なんとか仕上げたデータをDVDに焼いて、何事もなかったかのようにお寺に届けてから上りの電車に乗る。
今年、神さまにお願いするならただひとつ、早くマスクなしの日常に戻りますように。
山陽本線尾道駅 17:35 大阪まで。 出かけるついでに郵送する請求書を持ってくるつもりだったのだが、忘れた。毎回何かしら忘れる。 机の上でぽつんと主人の帰りを待つ請求書が哀れである。