湖国バスびわ虎姫線野寺橋 16:24

 
 



  
雪に覆われた田んぼが広がる。青空の下、雪を被った伊吹山が見える。
 
北陸線の長浜駅からバスで20分、そこからさらに4kmほど歩いた。
  
琵琶湖のほとりの小さな集落には、年末に降った雪がまだ残っている。ひっそりとしているが、かすかに人の気配がするのは、今日が日曜日だからだろう。
   
 

依頼いただいた家族の家は古い日本家屋だった。玄関の上に真新しい表札が掛かっている。
 
今日は家族の記念日である。二歳のお姉ちゃんの誕生日と、六ヶ月の妹ちゃんのハーフバースデー。
 
歳が違う子どものイベントを一緒に撮るのは難しい。同時にできるものではないから、撮影の段取りをその場で考える。実際にそれがうまくいくかどうかは「運」である。 
 
今日は姉妹のツーショットを撮れなかったのが残念だった。粘ってみたが諦める。せっかく呼んでいただいたのに申し訳ない。
 
 
 
赤ちゃんを撮ったあとは、二歳誕生日のお祝い。
 
大きなバースデーケーキが女の子の前に現れると、もはや彼女にはそれしか見えない。
  
誕生日の歌を歌ってローソクの火を吹き消したあと、生まれて初めて彼女は生クリームを食べた。
 
よほどおいしいのだろう。真剣にスプーンで生クリームをすくって口に運ぶ。
 
彼女の二歳の誕生日は生クリームたっぷりのバースデーケーキとして記憶に残るだろう。 
 
記憶されたものは決して忘れないものらしい。思い出せなくなっただけであるそうだ。