北海道阿寒郡鶴居村中久著呂 16:29
鶴居から標茶に抜ける国道をそれて、さらに10kmほど山のほうへ向かって車を走らせると目指す家にたどり着く。
家の周りには牧草地が広がり、その向こうは原野である。
小学1年生の女の子と、五歳と三歳の兄弟と遊ぶうちに、小学3年生のお姉ちゃんがスクールバスで帰ってきた。小学校は20km離れた村の中心街にある。
草刈りを途中で抜け出して帰ってきたパパも加わって、これで家族写真が撮れる。
子どもたちはよく遊ぶ。
とくに二人の男の子は仔犬のようにじゃれて駆け回る。庭はテニスコートくらいの芝生になっており、その端は雑草の生い茂った斜面なのだが、二人はダイブするようにしてそこを滑り降りる。伸び伸び遊ぶってこういうことか。よく見たら弟くんは前歯が一本抜けてるじゃないか。どこに落っことしてきたんだろう。
「おじさんどっからきたの?」無邪気なこの問いに答えるとき、なんだかウルトラマンになったような気がする。君の知らない遠い星から来た男。
自然に囲まれて育つこの子らも、いつかは世界の広さに気づいて都会に出てゆくのかなあ。
午後4時を過ぎると早くも夕暮れの気配が漂う。
空港に向かう道路脇の温度計には21℃という表示が出ている。そういえば今日は車のエアコンをつけずに、ずっと窓を開けて走っていた。