西日本鉄道福大線12系統護国神社前 12:40
境内の緑の木立からはツクツクホーシの鳴き声が聞こえる。
今日から10月であるというのに、九州ではまだ夏が終わっていない。
ママとおばあちゃんに付き添われてやってきた四歳の男の子は、はじめは戸惑いながらも、すぐに一緒に遊んでくれる。
幼い子どもの無邪気さは本当に眩しいものがある。
ずっとこのままでいてくれたらと思ったりするが、変わってゆくからこそ、彼の表情の輝きが愛おしくなるのだろう。
撮影終わってゆっくり歩いて帰ってゆく家族の後ろ姿を見ながらほっとする。
無事にひと仕事終えたのはママのほうである。
七五三撮影の要諦はいい写真を撮ることではなくて、親がドキドキイライラしたりすることなく穏やかな時間を過ごしてもらうことだ。
親が子どもに「ちゃんとしなさい」とか「ふざけないで」とか言わない七五三にしたい。
それはつまり、子どもがちゃんとしてなくていいし、ふざけてもいい七五三である。
子どもが楽しかったと思えば、あれこれ準備支度した親の苦労も報われる。そんな撮影にしたいと思う。
撮影終わって帰るとき、男の子は境内で拾った小さな棒切れを持っていた。ママは「置いてきて」と言うのだが、僕はそれをウェットティッシュで丁寧に拭いて彼に渡す。
今日の記念に持って帰ればいい。二、三日のうちに捨てられてるかもしれないけれど、今の彼には必要なものなのだ。
「すみません」と恐縮するママに僕は言う。
ほら、あれですよアレ。甲子園で敗退した高校球児がグラウンドの土を持って帰るようなものです。
福岡市中央区六本松 12:39 本日の撮影終わり。数え五歳の七五三。無邪気に遊んでくれて嬉しい。お酒とお菓子をお土産にいただいた。ありがとうございます。空港に降りる飛行機が間近に見える福岡らしい風景。
鹿児島本線博多駅 13:29 尾道に帰ります。座席を減らされてから乗るのが嫌な813系。おじいさんが「ぜんぜん席が空いとらん」と大声で言いながら隣の車両へ移動してゆく。二人席を一人で占有できないとダメなのである。
鹿児島本線赤間~教育大前 14:08
九州はまだ暑いが、10日後には長崎のおくんちが終わってそれから涼しくなる。
小倉駅「北九州駅弁当」のかしわうどん。 新人らしいおばあさんがたどたどしく具材を乗せて、通常2枚のかまぼこが今日は4枚。