宇野線岡山駅 16:05

  
 
 
 
高松行きの快速「マリンライナー」は満員の乗客を乗せて海を渡る。
大小の島々に架かる橋を轟々と走り抜ける間じゅう、座れなかった子どもがドアの窓ガラスに顔をくっつけて外を眺めている。
  
夏休みとあって車内は大きなバッグを提げた家族連れが目立つ。
加えて今夜は高松で花火大会があるらしい。浴衣姿の女の子が乗っているのはそのためか。
 
今はほぼ毎週のようにあちこち出かけているけれど、学生の頃は時刻表で念入りに計画を立てて、ひと夏に一回限りの旅行をしていた。
 
家と学校の往復だった毎日から解放される夏休みは貴重品だった。
 
もちろん夏は来年もあるし、再来年もある。
しかし「今年の夏は一回きり」なのが十代の夏だ。ひと夏の価値は四十代半ばの今の数十倍ある。

その頃の旅と今の旅と、どちらが記憶に残るかは言うまでもない。
  
おそらく今から10年後、いや3年後でもいい、2018年の夏にどこへ行ったかなんて覚えちゃいないのは間違いない。そのかわり、断片的な光景だけがかろうじて記憶に保存される。
  
列車同士の行き違い待ちで止まった予讃線箕浦駅の前は海。
運転士さんが5分止まると言うから、急いで駅を出て堤防によじ登って眺めた夕暮れの空と海がそのままステンドグラスになりそうだった。
 

東海道本線大津駅。

須磨の海に夏の雲。



相生から赤穂線回りで岡山へ。

瀬戸大橋線からの眺め。

予讃線に乗り換えて松山へ。







箕浦駅の前に広がる瀬戸内海の夕焼け。