山陽本線尾道駅 13:30
お宮参りの祈祷中はすることがない。浄土寺の小さな休憩所に入ると、ベンチに置き忘れられた小銭入れがあった。
拾い上げると中にお金が入っている。一年の始まりにこれは幸先がいい。そのままポケットに入れ、ずに売店のおばさんに預けた。
そいえば昨年も福岡で撮影したときに小銭入れを拾ったな。このときは交番に届けた。
他人様のお金が転がり込んでくるチャンスなのに、みすみす見逃すのだからお金が一向に貯まらない。
尾道の浄土寺境内にはたくさんの鳩がいて、売店で売られている鳩の餌を子どもたちが撒くと一斉に集まって来る。
初めてのお宮参りをするパパとママはそういう光景に目をやる余裕がない。
本堂からは読経の声がマイクに乗って聞こえてくる。その中に赤ちゃんの泣き声が混じる。だいぶ盛大に泣いているようだ。眠くなったのかお腹が空いたのか、抱っこしているパパとママは気が気じゃないだろう。
斯様に実際のお宮参りは写真を撮るどころではない。
祈祷が終わって撮影するときに、ママが赤ちゃんに「もうちょっとだからがんばって」なとど言っているのは、自分自身に言い聞かせているようなものである。
撮っているほうも早く終わらせないといけない気持ちになってくる。
浄土寺でお宮参りを済ませた家族は、坂の路地を歩いて我が家のスタジオにやってきた。
今日は陽射しが入りすぎるので、白いレースのカーテンの上からもう一枚白い布を重ねる。
「ガラガラ持ってくればよかった」とママが言うが、道具がなくても三ヶ月の赤ちゃんは笑います。
「笑った笑った!」赤ちゃんの表情が緩めば大人たちが盛り上がる。
子どもが笑えば誰もが満足する。赤ちゃんの笑顔はすべてに勝る。
尾道でお宮参り撮影のぼーっと待ち。読経は時間がかかる。本堂からギャン泣きする赤ちゃんの声が聞こえてくる。パパとママは落ち着かないだろうなあ。