尾道 16:18
隣の公園に一本だけある紅梅の花が咲き始めた。
白木蓮の蕾もちゃんと出てきた。
今日も寒いが、季節はゆっくりと動く。
家にいるときは気まぐれにスタジオの看板を家の前の通りに出してみる。
写真3カット1000円という値段は通りかかった観光客向けのサービス価格。
それでもめったにお客さんは路地の奥まで入ってくることはない。
看板を出してはいても、お客さんが来るはずないとたかを括ってパソコン仕事しているから、実際に来られるとあたふた落ち着かない。
心の準備というのは、いつ何時にという当てがないとなかなか難しい。
お客さんは来ないと思い込んでいるから、看板を出しっぱなしにしたまま、隣の公園に写真を撮りに出る。
5分ほどで戻ると、路地で若い三人組から「写真の三原さんですか」と声をかけられた。
家の前まで行ったのに、僕がいないから少し探していたらしい。
友人同士のようだから三人で撮るのかと思ったら、そのうちの一人だけが写真を撮りたいらしい。SNSなどのアイコンにしたいという。
彼は大学生くらいに見える風貌ながら、社会人で結婚していて来月子どもが生まれるらしい。
カメラを前にしてもまったく照れたり恥ずかしがったりしない。
撮り終えたあと、モニタで撮ったばかりの写真を見ながら、これがいいあれがいいと三人は賑やかに写真を選んでから帰っていった。
気の置けない友人同士の旅というのは楽しいのだろうな。
彼らの後ろ姿を見ながら、僕にはできない旅だとちらりと思う。
