尾道 16:02

 
 

 
隣の公園の梅の蕾が日々少しずつ開いて、ちんまりとしたピンク色の花を見せている。
 
変化のない毎日のように思えるけれども、ちゃんと季節は巡る。
 

 
昨年予約しておいた本が届く。
 
イラストレーター井田千秋さんの「家が好きな人」という本で、若い一人暮らしの女性の平凡な、それでいてかわいい部屋が柔らかいタッチで描かれている。
 
登場人物は自分好みに部屋をアレンジして、まったりと一人の時間を過ごす。その様子がなんとも心地よく感じられる。 
 

 
アンティークっぽい家具だったり食器だったり、間接照明にしたり部屋を暗くしてプロジェクターで映画を見たり、そんな「ささやかおしゃれ」な都会の暮らしに憧れる。いや、憧れていた時期が僕にもあったよ、20代の頃に。 
 
現実は当然ながら物語のようにはいかないもので、すぐにゴミが溢れてたり、脱いだ服が散らかったりしてぜんぜんおしゃれにならない。
 
そして今は猫が8匹いる家で、壁には猫のおしっこよけにペットシートを貼りめぐらせているし、ホットカーペットでは大小の猫がぐだぐだしている。
 
もっとおしゃれ感を追求した暮らしを実行して、インスタやYouTubeで発信……そんな気はもうどこにもない。
 
だからこそ過ぎ去ってもう手に入らない憧憬を描いたカラフルなイラストを、いいなあ、と思いながら眺めるのである。
 

 
毎日料理の皿を撮っているテーブルは、僕が20代の頃に勤めていたデパートで買ったもので、白いペンキを粗く塗ってアンティーク調に仕上げられている。
 
20年以上経って天板がだいぶ黒ずんできたから塗り直そうと思いつつ何年経つだろう。
 
毎日おしゃれを意識しても疲れるだろうし、これくらいでいいか。
 
 
 













今夜のおさんどん。 麻婆豆腐 生牡蠣 鰹のタタキ ポテトサラダ